歯周病と全身疾患とのかかわり 歯周病は万病のもと

「お口の病気はお口の中だけのもの」と考えていませんか?近年、歯周病が全身にもたらす影響、また全身疾患が歯周病に与える影響についての研究が進められています。最近では、実に様々な疾患が歯周病と関連していることが報告されています。今回はその中でもエビデンスレベルの高い5つの疾患についてお話しします。

1.糖尿病  

 「糖尿病」には網膜症・腎症・神経障害・末梢血管障害・大血管障害などの合併症があり、歯周病はこれらに続く第6の合併症と捉えられており、糖尿病患者さんの多くに重度の歯周炎が見られます

また、歯周病の炎症の場で産生されるサイトカインのうち、ある種のものがインスリンの効きを阻害する(インスリン抵抗性)ため、歯周病患者は血糖コントロールが改善しにくくなります。

歯周病治療を行うことで炎症が収まり、サイトカイン濃度が低下すれば血糖コントロールの改善に影響を与えると考えられています。

2.心疾患  

血管内に侵入した歯周病原性細菌やその病原因子などが、血流に乗って冠状動脈に達すると血管に沈着し血栓を作りやすくなり心血管の病気が発症しやすくなります。

周病に罹患していると、心血管疾患の発症リスク1.15〜1.24倍高まると言われています。

3.早期低体重児出産 

妊娠中はホルモンの変化などによって歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。歯肉の血管から侵入した歯周病原性細菌やサイトカインが血流に乗って子宮に達すると、子宮筋の収縮を引き起こして早産や低体重児出産になる可能性があります。

最近の報告によると、歯周病かかった妊婦さんに低体重児出産が起きるリスク健常者の4.3倍程度と言われています。

4.誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

誤嚥した唾液中の細菌などが肺に感染して起こる肺炎が「誤嚥性肺炎」で、高齢者に多く見られる病気の一つです。

特に、要介護の高齢者などは飲み込む力や咳反射が低下しているため、唾液やプラークなどが気管に入りやすく誤嚥を起こします。実際、この病気の多くの患者さんから歯周病原性細菌が見つかっています。

そのため、高齢者に口腔ケアを行い、歯周病原性細菌等の口内細菌が減少する肺炎の発症率が下がることが報告されています。

5.骨粗鬆症  

歯周病になった歯肉で産生されるサイトカインには、骨代謝に影響を及ぼすものがあり、歯の喪失と骨密度の減少には関連があるという研究報告があります。

逆に、骨粗しょう症の人が歯周病に罹患すると、歯周組織の歯槽骨が急速に吸収されることで症状が進行しやすくなる可能性が知られています。

 

以上、エビデンスレベルの高い5つの疾患について解説しましたが、そのほかにも、認知症脳梗塞肥満とも関係が深いといわれています。歯科医院を定期的に受診して歯周病を改善しましょう。

また、ブラッシングなどホームケアがとても大切ですので受診時の歯科衛生士の指導を参考にして、自宅でのケアをよろしくお願いします。