歯周病について

「最近歯がぐらついてきた」「かたいものを嚙むと痛い!」。
それ歯周病かもしれません!

テレビコマーシャルでこのようなことを聴いたことはありませんか?

聴きようによってはこのような症状が出てきたら歯周病になり始めているかも…と受け取れないこともありません。

実際、当院でも患者さんに歯周病であるとお話ししたときに、「何ともないんですけど歯周病なんですか?」というご質問をいただくことがあります。

実は症状が出てきたころには歯周病はすでにかなり進行してしまっていることがほとんどです。軽度の歯周病はほとんどの場合無症状ですので、自分自身で気づくことはほとんどありません

歯科医院を受診してはじめて指摘されることが多いのです。

Symptoms

歯周病の症状

歯周病の症状の特徴にはつぎのようなものがあります。

  • 自覚症状が少ない
  • 放っておくと確実に進行する
  • 歯ぐきから出血する
  • 嚙むと痛みを感じる
  • 歯がぐらぐらする
  • 口臭がする
  • 進行すると元に戻すのは難しい
  • 最終的には歯が抜ける

歯ぐきの出血は比較的軽度の歯周病でも起こります。しかし、嚙むときの痛み、歯のぐらつき、口臭などの症状はかなり進行した歯周病でないと出てきません

では歯周病とはどのような病気なのでしょうか?

What is Perio

歯周病ってどんな病気?

歯を支えている歯槽骨という骨が溶かされながら進行します

歯周病は歯の根っこを支えている歯槽骨が溶かされていく病気です。歯槽骨が溶けてなくなった程度によって、軽度・中度・重度と大まかに段階分けされます。

軽度の症状ですと、軽い出血がある程度でほとんどの方が自覚症状がありません。これが中度になると、図に示されているように歯を支えている骨が溶けていることがわかります。

こうなってしまうと歯にぐらつきがみられるようになり、出血が増えたり、歯ぐきの腫れや膿がでてきたりします。

そして、重度ではさらに骨が溶けて、歯がぐらつきが大きくなり、咬むと痛みが出てくるるようになります。そして最後には歯が抜けてしまうのです。

歯周病はお口の中だけの問題と考えがちですが、実は全身の病気とも大きく関わっています。

Perio and systemic diseases

歯周病と全身疾患

お口だけじゃない!歯周病と全身疾患の関係性

心臓病:発症リスク120%~280%に

肺炎:日本人の死因の第4位が肺炎

低体重児:出生率7.5倍に

歯周病はうつる!?あなただけの問題ではありません

歯周病は感染症です。

このような行為であなたの大切なご家族も歯周病が感染するリスクがあります。

歯ぐきの中にはたくさんの血管が通っています。歯周病の原因菌は歯ぐきの中の血管を通って全身に広がり、様々な悪影響を及ぼします。

では歯周病の原因はなんでしょうか?

Cause

歯周病と全身疾患

歯周病は歯周病と呼ばれる細菌による「感染症」です。

歯周病は数十種類の歯周病菌と呼ばれる細菌による感染症ですが、歯周病の悪化を手助けする環境があり、それをリスク因子と呼びます。

リスク因子には次のようなものがあげられます。

歯周病のリスク因子

喫煙
咬合性外傷
修復物の不適合
歯列不正
不衛生な口腔内
全身疾患
女性ホルモン
ストレス
遺伝的要因
プラークが停滞しやすい陥凹状態
薬の副作用
家族間の感染
肥満
過去の歯周病歴
飲酒、栄養、社会経済的因子

お一人、お一人にあるさまざまなリスク因子の違いにより歯周病の進行に差が出てきます。リスク因子が多く高いほど歯周病は進みやすく、少なく低いほど進行が緩やかになります。

たとえば喫煙は歯周病の最大のリスク因子といわれます。

「肺がん予防のために禁煙する」というのは耳にしますが、「歯周病で歯を失わないために禁煙する」こともとても重要なのです。

当院では現状を判断するだけではなく、将来の状態を予測するために、OHISというソフトを用いて、将来の歯周病進行のリスクを判定しています

OHISとは?

OHISはアメリカの歯科大学および歯周病専門医のグループが、膨大な統計学的テータをもとに10年の歳月を費やして作ったもので、現在、世界で最も信頼性の高い歯周病リスク評価システムといわれています。

OHISでわかること

歯周病のリスクと症状を、未来・現在・過去にわたって視覚的に表示します。

  • 未来:歯周病のリスク
  • 現在:病状、健康な状態とあなたの状態の比較・分析
  • 過去:過去のリスク評価の履歴

上記に加え、推奨される介入方法やメインテナンスの間隔などを膨大な疫学データから抽出・提示します。

リスクが高くなるほどいちじるしく歯を失う可能性が高くなる

15年たつとリスク2群に比べて、リスク5群は22.7倍、リスク4群は8.1倍、リスク3群は5.1倍、歯周病で歯を失う可能性が高かった。

Treatment

歯周病の治療

リスクを下げ、歯を守っていくためには、歯周病治療により細菌を減らしていくことがが不可欠です

歯周病治療ではつぎのようなことを行います。

歯みがき指導

歯垢の取り残しのないよう、正しいブラッシングの仕方をお伝えしていきます。

歯周病治療① 歯みがき指導

プラーク(歯垢)はただの食べかすではなく、何億もの細菌の塊です。どんなに治療をしても、毎日の歯みがきでプラークが取れなければ、いつまでも細菌を減らすことはできません。

そこで、まずは歯みがきの指導を行います。

歯石取り

歯ぐきに付着している歯石を専門的な器具を用いて除去していきます。

歯周病治療② 歯石取り

歯石には無数の穴があり細菌の格好のすみかとなっています。つまり、歯石を除去しない限り歯周病は改善しません

また歯石はご自身で取ることができませんので、歯科にて専用器具を使って取り除きます。

外科的治療

重度の方、回復があまり見られない方には、歯ぐきを開けて外科的治療を行っていきます。

歯周病治療③ 外科的治療

歯の根の表面は複雑な形をしているので、歯周ポケットが深い場合、歯ぐきに隠れた状態では完全に歯石をとることができない場合があります。また歯の根の表面自体が感染して悪くなってしまっている場合もあります。

このような場合には歯ぐきを開けて、外科的な治療で悪くなっている部分を完全に取りのぞく必要があります。

生活習慣についてのアドバイス
歯周病治療④ 生活習慣についてのアドバイス

今まで話してきましたように、歯周病の治療はリスク因子の改善がとても重要です。

当院では本気で歯周病を改善していただきたい、できるだけ歯周病の予防をして歯を守りたいと考えています。

生活習慣の改善で下げることのできるリスク因子についてはできるだけお話ししたいと考えています。

守っていきたいのはあなたの健康と幸せです

Maintenance

メンテナンス

せっかく歯周病の治療をして改善しても、そのあと放置してしまうと歯周病は必ず再発します。良好な状態を維持するために、メインテナンスがとても大切です

歯石取りやクリーニングでいったん細菌は減少します。しかし細菌はバイオフィルムという歯みがきでは完全に除去できない「すみか」を作り、その中でどんどん数を増加していきます。

また歯磨きに磨き残しがあることも多く、歯科医院でチェックしてもらい磨き残しをフォローしてもらうことも必要です。

細菌は、バイオフィルムによって必ず増えてしまいます。

バイオフィルムとは細菌によって作られる強固な「膜」です。これに守られ、細菌はどんどん繁殖します。

排水口のぬめりもバイオフィルムの一種。ほんの数時間でできてしまい、とても強固なため、歯みがきでは取れません。

そこで、定期的にバイオフィルムを取り除き、細菌を減らすことにより、歯周病の進行を予防することが必要となります。

これには歯科衛生士によるクリーニング(PMTC=機械的歯面清掃)が不可欠です。

お口の健康維持のためにはご自身によるブラッシング(=セルフケア)と歯科医院でのメンテナンス(プロフェッショナルケア)の両方が必要です。

お口の健康を維持していくために、「歯を守る治療」を続けていきましょう